恋の神様に受験合格祈願をしたら?

【side:菅野大志】

 新学期5日目。
 校内一斉で行われるスポーツテストでは、体育会委員と学級委員が各クラスを仕切る。
 そして、教師のほとんどが何かしら記録測定を担当する大型行事だ。
 全員体操着に着替え、男女で違う測定がほとんどだから、クラスの同性単位で移動。
 効率よく測定を行うため、各クラスの種目別移動の順がすべて決められている。
 全校生徒参加の行事でありながら、生徒会はやること1つないラクな行事だ。
 授業なし。
 頭を使わずに済む。
 疲れる持久走と懸垂さえなければ、サイコーの日だ。
「新鮮じゃない? 俺たち、普通に行事してるよ」
 体育館の端で垂直飛びの列に並びながら、俺はリューイチのデカい背中に話しかけた。
 成績は同じくらいで志望学科が同じとなれば、当然クラスも同じなるのが高校3年生。
「超ラクチンというか、物足りないというか、家庭用流し素麺の機械で流される続ける素麺の気分だな」
 リューイチが豪快に笑った。
 役割がないから、俺もリューイチも伸び伸びしてしまう。
「おい、あれ」
 リューイチが俺を肘で突いた。
 そして、入り口を顎でしゃくった。
「日向ちゃんだ。谷地さんと見崎さんもいる。そういえば、3人とも同じクラスだったな」
 俺は内心、「リューイチ、今さらすぎだろ」とツッコミを入れた。
「今ここに来たってことは、先にいくつか外の種目か身体測定を済ませてきたってことか」
 リューイチが俺を見て、『会えてよかったな』と言わんばかりにニヤッとしてきた。
 生徒会メンバーは親友であり腐れ縁であり幼馴染だから、互いを呼ぶとき、ほとんど呼び捨てか言いやすいものだけど、新1年生の3人は違う。男が相手ならともかく、ほとんどが『さん』『ちゃん』の敬称をつけて呼ぶ。
 一部、あっという間に仲がよくなりすぎて、呼び捨てになってるヤツらもいるが、あくまで例外だ。
「いつから友達なのか知らないけど、あの3人、凄く仲いいよな」
 リューイチが感心したように、3人を眺めながら腕を組んだ。
 まるで、自分の娘たちの生活を垣間見ている親父のようだ。
「本物の親友なんだろ?」
 俺は楽しそうな2人に困った顔をして何か話すニコちゃんの姿が愛おしくて、目を細めた。
< 24 / 116 >

この作品をシェア

pagetop