恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「見つかったか?」
 すぐにリューイチがでた。
 その一言で、ニコちゃんが戻ってないと知れた。
「いいや、食堂にも体育館の自販機にもいない」
 焦りのあまり早口になりながら、俺は頭の中で自販機に行くまでの別ルートを考えた。
 見崎ちゃんと谷地ちゃんは「先行きます」と廊下へ駆けていく。
 俺も電話をかけたまま廊下に出た。
 大っぴらにケータイで連絡を取る俺を、通りがかった生徒がギョッとした顔で見る。
 校則で、校内でのケータイの使用は厳禁となっているからな。
 生徒が校内で大ぴらにケータイを使用するには、行事などの進行や報告が必要な場合で、なおかつ教師から許可を得ているときのみだ。
 ただし、多忙な生徒会は特別だ。メンバー同士の連絡のみ、ケータイの使用を許されている。
「わかった。日向さんが戻ってきた場合に備え、1人待機させ、あとの全員で探す。ちょっと仁美! お前っ。ケイ、ヒロも。マモルは待て! 俺も行くからお前は待機だ」
 どうやら、電話の向こうで仁美ちゃんが一番に教室を飛びだしたみたいだ。
 飛びだし遅れたマモルに待機命令。
「見つけ次第、連絡入れる。休憩時間までに見つからなかったら、予算会は明日の放課後に持ち越しだ」
 生徒会長であるリューイチの指示は絶対だ。
「持ち越しで文句が出たら、俺が土下座で謝る!」
 言い切った俺は、ケータイをポケットに戻した。
 来たのと違うルートで、視聴覚室を目指すか。
 俺は1階の廊下を突っ走ると、視聴覚教室がある校舎のもう1つの階段に足をかけた。
 考えろ俺。
 ニコちゃんは一体どこをどう進んだんだ。
 視聴覚教室を出て曲がった段階で、あの見崎ちゃんと谷地ちゃんがすでにニコちゃんを見失ってたってことは……。
 何か見落としてることがあるはずだ。
 何か……。
 焦りと不安で吐き気がしてきた俺のポケットで、ケータイが震えた。
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