恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「『出来る』じゃなくて『やる』よ。どうやればうまく出来るかはわかんないけど、模索して、試し続けて、全力で護る。そう決めてる。これじゃ、答えにならない?」
 俺は態と笑い、重くなった空気をどうにかしようとした。
 けど、仁美ちゃんは俺の笑みに釣られなかった。
 それだけ、仁美ちゃんが3人のことを考えてる証拠だ。
 それは、俺も同じだ。
 見崎ちゃんや谷地ちゃんが傷ついたら、ニコちゃんは悲しむ。
 ニコちゃんを護るということは、見崎ちゃんと谷地ちゃんを護るも同じ。
「アンタが平々凡々な顔してて、成績もそこそこで、運動も普通だったら、こんな苦労も努力も不要なのにね」
 仁美ちゃんが溜め息をついた。
「それは言えてる。顔が普通なだけで、告白される回数は激減するだろうし」
「おい、大志。それは違うぞ。顔が普通で後が優秀ってのが1人いるだろう。かげでモテモテなヤツが」
 リョーイチが苦笑した。
「マモルかあ」
 俺は両手を腰に当てた。
 もしも俺が女だったら、マモルかリューイチと結婚したい。
 それくらい、マモルはいいヤツだ。
 ちなみに、ヒロは頼まれても断る。
 いくら顔がよくて、頭がよくて、運動神経がよくても、性格がひねくれすぎている。だから、一緒にいると面白いんだが、恋人には絶対したくない。
「ちょっとリューイチ、真面目な話をしてんだから茶化さないで!」
 仁美ちゃんがリューイチに詰めよった。
 圧されたリューイチが後退りした。
 まかさの、夫婦ゲンカ勃発かは?
 俺やヒロたち幼馴染組は、リューイチと仁美ちゃんを『夫婦』と呼ぶ。
 お前ら、いい加減にその意味に気づけよな。
 将来、絶対に夫婦になってるって俺たち幼馴染組は信じてんだからさ。
 チャイムが鳴った。
 夫婦ゲンカはお預けか。
「じゃあ私、教室に戻るから」
 仁美ちゃんが踵を返した。
 俺とリューイチは同じクラスだが、仁美ちゃんは違う。
「あのさ」
 俺は仁美ちゃんの背中を呼び止めた。
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