オジサンに恋しちゃダメですか
ドキッとした。

課長の声って、低くて柔らかくて、優しい感じ。

しかも、奢ってくれるって。

「はい、頑張ります。」

そう言うしか、ないじゃないか。

課長の、卑怯者。


自分のデスクに戻ると、四宮君が何気に聞いてきた。

「課長に、何て言われたの?」

「ああ……」


”頑張ったら、奢ってやる。”


なんだか、特別な言葉のような気がして、誰にも教えたくなかった。

「内緒。」

「へ?」

四宮君は、ポカンとしている。

「何なに?何の話?」

隣の席の春乃も、身を乗り出して聞いてくる。

「何でもないよ。」

そう言って私は、パソコンに保存してある、書きかけのエクセルを開いた。


明日、どんな仕事をさせられるんだろう。

そして浮かぶ、ご馳走の山。

いつの間にか、課長に奢ってもらうご馳走が、楽しみで仕方なかった。
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