BRST!
第10章

/ゆきと里麻




尚も外の世界は白銀のもの。


…なんてのは、嘘で。都会に越してきた私たちは雪とは無縁の生活をしていた。




「昴くん、」

「んー?」

「響兄、何か言ってましたか。」



彼のネクタイをきゅっ、と締めつつ。


既に制服を身に纏った私は努めて自然な口ぶりでそう言った。



実は、あの後。


最近のヤツは目に余るほど変態だから、とか何とか理由をつけて昴くん一人で響兄のお店に行ったのだ。



そこで話したのは、もちろんこの間の事件のことで。


そんなことを言いつつ。昴くんのことだから、きっと私があの出来事を思い出すことを自然に防いでくれたのだと思う。


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