たぶんこれを、初恋と呼ぶ
翌日、研究開発部に昨日同行した江藤が訪ねてきた。
「懇親会?」
「そうです。MSMさんて全体的に若いからか、取引先ほとんどと必ず懇親会っていって飲み会開いてるんですよ。ウチは岩田さんが頑なに拒んでたんで今までは営業部だけでしたけど、今年は担当も変わったし、研究開発さんもどうですかって、百合川さんから」
「え、百合川さんとメールしてんの?」
「いや安尾さんもCCに入ってましたよ」
「え、マジ?」
普段メールなんて社内だけで、取引先となんてした事ないから完全に見落としていた。
「大体2回はしますよ。よろしくお願いしますの会とお疲れ様でしたの会」
「何だそれ、パリピの極みか」
「パリピしかいないでしょ、あの会社」
「確かに…」
「まあそういう事なんで、今週の金曜は空けといてください。研究の方でも人数集めといてくださいね」
「声は掛けるけど、あんまり期待しないでくれ」
「あー、そうっすね…。とりあえず安尾さんは担当なんで出てくださいよ!あとは八嶋が来れば何とかなるでしょ」
「あー八嶋な」
八嶋は、うちの研究開発の入社2年目の若手だ。
イモみたいなパッとしない研究開発の社員達の中で、ケタ違いのイケメンだと言われている。俺がレベル0だとしたら、あいつは余裕のレベル100くらいのイケメンさ。
営業でいけば容姿だけで客が取れそうなのに、と思う。
とりあえず八嶋が来れば注目はそっちに集まるだろうし、俺のような地味な人間を餌にしてからかうような真似はしないだろう。
「俺が何ですか?」
話が聞こえたのか、コンビニの袋をぶら下げて、八嶋が現れた。
「週末、MSMさんと飲み会があるから、お前も参加な」
「え、今週末ですか?無理ですよ、俺研修入ってるんで」
「マジかよ。八嶋が来ればMSMの若い子達絶対喜ぶってー。八嶋今彼女いないだろ?結構可愛い子多いぞ?」
明らかに江藤が落胆してみせた。
悪かったな、若い子達が喜ばないような俺でよ。