たぶんこれを、初恋と呼ぶ
予想は的中し、居酒屋に着いてとりあえずビールを頼んで直ぐに、アツシさんに昨日のMSMさんとの打ち合わせの件を事細かに聞かれた。
「昨日の件、どうだった?」
「…確かに、MSMさんは若い女性が多かったですけど、昨日の時点では先方の社長と担当の方しかお話ししてないんで、何とも言えないです」
「その担当だよ!若い子だろ、馬鹿にされなかったか?」
「百合川さんていう方です。江藤が言うには去年まで事務にいた方で、俺の説明もちゃんと聞いてくれて、むしろ事前にうちの事調べてくれていて、やりやすかったですよ」
そう伝えると、アツシさんは「百合川さん!?」と驚いた。
「え、あの子デザインに移ったの?」
「社長が引き抜いたって言ってました。センスが良いって」
「何だよ、あの子なら安心じゃん!俺の時からそうしてくれれば良かったのに!くそ、お前ツイてるな!」
「アツシさん、百合川さんの事知ってるんですか?」
事務だって言ってたけど、関わるのは先方の担当者かデザイナーの人だけで、事務員とそんなに関わりあるのだろうかと疑問が湧いた。
「あそこの若手デザイナー、お茶すら出さねえしマジで何もしねーから。お茶はいつも百合川さんが淹れてくれてたな。あと最初の資料とかすげえ読みづらくて最悪だったんだけど、一度だけ見やすくまとめられてる時があって。何故かそれ、百合川さんが作ったらしいんだよな。何か担当者が風邪で休んでるとか言って」
「聞けば聞く程すげえ会社ですね…」
「社長はとにかく忙しい人らしいし、本気で手が回らないんだろうな。でも百合川さんも大変だな、いきなりデザインに回るなんて」
「そうですよね…」
「まあ、お前は良かったじゃん、スムーズに行きそうで。下にも八嶋がいるし、あいつは出来る奴だから昇進早そうだし、その為にすぐMSMさん引き継ぐと思うよ。本当ラッキーだなお前。さ、飲め飲め」
注がれるがままにビールを飲む。
アツシさんがだいぶ出来上がって眠ってしまった頃、八嶋が来た。