結婚前夜
でも、それから今日までの半年間、一度も『好き』の言葉は聞かされなかった。

もちろん、私も好きだなんて伝えていない。

プライベートで会うのも、休日に挙式の打ち合わせ、ドレス選び、新居を決める為に不動産屋を訪問し、部屋が決まれば家財道具の購入の為に電気屋、家具屋を訪問し…。

最早、デートと言うよりも、共同生活の為の付き添いと言う方がしっくり来る。

ほとんど私は、お飾りの妻状態だ。

最終的に決める時に、私にもこれはどうかな?と聞いてくれるけど、はっきり言って、そこまでほとんど決めているのは彼であり、私の意見なんて仮に伝えたところで覆る事はないだろう。

ただ一つ、私が唯一ワガママを言ったのが、挙式を挙げるチャペルで、パイプオルガンを弾いてみたいと言った事だ。

残念ながら、これはチャペル側の都合で叶わなかったけれど…。

新居も、中島課長は3LDKのマンションを探していた。

まだ新婚ならそんなに部屋数も要らない筈なのに、何故か彼は部屋数に拘っていた。
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