結婚前夜
家具家電、インテリアについては、特に希望はなかったみたいだけれど、部屋の広さに見合うそれらは全て、彼が選んだ物であり、そこに私の意見はない。

これにするけどいいかな?と、最終確認だけだった。

決して彼の選んだ物が悪いのではない。
寧ろ、私好みのチョイスで本当に驚いている。

でも…。


きっと彼の妻になるのは、私じゃなくてもいい筈だ。


私は、日に日に口数が減り、笑顔もなくなり、いよいよ明日は結婚式。

16回目の溜息をつこうとした瞬間、玄関のインターホンの音が聞こえた。


暫くして、母が私の部屋にやって来た。

「優奈、悠人さんが来てるわよ」

溜息の原因である彼が何故?
明日、式場で会うのに…。
私が部屋から出ようとドアに近付くと、部屋の前に、中島課長が立っていた。


「…入ってもいいかな?」

躊躇いがちに、私に問う彼は、いつもの様な自信に満ち溢れた彼ではなく、迷子の様な表情だった。

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