結婚前夜
背中に左手を回し、ロビーから展示室へと向かった。

彼女そのまま視線を足元に落としたまま、俺のエスコートを受ける。

博物館の中の展示品を並んで一緒に見るものの、気持ちは沈んだままだった。

きっと彼女はもっと気分が悪いだろう。

こんな時に、何か気の利いた事を言って和ませたいのに、情けない事に何一つ思い浮かばない。

特別展の展示品の中には、きっと彼女の幼少期に思い出のある物があったのだろう。
ほんの少し、彼女も和んだ様だった。

それだけで、俺もホッとした。

お見合いの場に似合わないかも知れないと思ったけれど、彼女が楽しめたら俺的にはそれで充分だ。

俺達が博物館内の展示品を見終わったのは、11時半を過ぎた頃だった。
博物館ご自慢の庭園を散策するには、お昼時の陽射しはとてもじゃないけどキツすぎる。
流石に外に出て話をする気にはなれない。

時間も時間だし、博物館の中にあるカフェに入り、ここで軽い食事を取ることにした。

ここのガラス張りの窓際の席から、イングリッシュガーデンが一望できる様だ。
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