結婚前夜
お互い食事が終わって、器を下げられた後も、お互い言葉を発する事はなかった。

…まずい、このままでは下手したら断られてしまうかも知れない。

内心かなり焦っていたけれど、結局、何も会話のないままカフェを出た。

食事も済ませたけれど、この暑い中、庭園散策は熱中症になってしまうかも知れない。

この後の事をどうしようかと悩みながら彼女の様子を窺うと、どうやら帰りたそうだけど口に出していいものか悩んでいる風に見えた。

本格的にまずい。
彼女を帰らせないためには…。

「結婚、しませんか?」

思わず口から出た言葉だ。


******


その時の事は、今でも忘れられない。

彼女は驚いた表情を見せていたが、返事をする前に頷いていた。

その表情がとても可愛くて、気が付けば、博物館の角の死角になる場所に連れて行きキスをしていた。

そして休日明けには、部長を通じて改めて結婚の申し込みをした。

彼女からも、正式にお話をお受けしますと返事を貰い、今日に至る。
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