契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
そんな明るい毎日の中で、俺と叶夢が特に楽しみにしている時間があった。
それは、月に一度だけ訪れる、特別なおやつの時間だ。
「こんにちはー、道重堂でーす」
玄関の方でそんな声が聞こえると同時に、俺と叶夢は部屋を飛び出して、食堂のある一階にバタバタと駆け降りる。
道重堂はこの施設を援助していて、それに加えて月に一度、子どもたちに無償で和菓子を提供していたのだ。
「よっしゃ! 今日はきんつばだ!」
「美味しそう……」
人数分の和菓子が入ったバットを覗き、派手に喜びを表現する叶夢と、静かながらも和菓子に熱い視線を送る俺。その光景が、月一の恒例行事だった。
ほかの子どもたちも喜んではいたものの俺たちほどの感激はなく、次第に道重堂の従業員たちも俺たち二人の顔を覚えてくれるようになった。
「なー彰、和菓子ってなんであんなに美味しいんだろう」
「うん。作ってみたいよな。自分であんここねたりしてさ」
叶夢とそんな話をしていると夢はどんどん膨らみ、白い紙を広げて、創作の和菓子の絵を描いてみたりもした。