契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

それから道重夫妻は頻繁に施設に足を運ぶようになり、俺を色々な場所へ連れて行った。

水族館、動物園、遊園地……俺にはすべてが初めて見るものばかりで、純粋に楽しかった。

俺はそこで経験させてもらったことを、毎回興奮気味に叶夢に報告していた。

「でさー、ジンベイザメってこんなにでっかいんだ! でも人は襲わないらしくて、優しい顔してた」

「ふーん……」

けれど、叶夢は読んでいた本から目線を上げずにそっけない返事をした。

……そうだよな。俺だけが連れて行ってもらった場所の話聞かされても、つまらないよな。

「……あのさ。今度、おと……道重さんに、聞いてみようかな」

俺は夫妻と会っているとき、彼らをお父さん、お母さんと呼ぶようになっていた。

でもそれを叶夢の前で出すのは恥ずかしくて、慌てて言い直す。

「なにを?」

「俺だけじゃなくて……叶夢と毬亜のことも、引き取ってもらえないかって」

幼い俺は、それがなかなかの名案なのではないかと思っていた。

道重夫妻と過ごすうちに、彼らがかなり裕福であることはなんとなくわかっていたから、子ども三人くらい引き取っても問題ないんじゃないか、と。


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