契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

叶夢とはそれ以来ほとんど口をきかなくなってしまい、ぎくしゃくした関係のまま、俺が道重の養子として引き取られていく日を迎えた。

別れ際、施設のみんなは俺を見送るのとともに手紙や折り紙のプレゼントをくれたが、叶夢は姿すら見せてくれなかった。

最後に、仲直りがしたかったのに……。

切ない思いを抱えながら、両親の後について駐車場に向かう。そして車に乗り込む寸前のことだった。

「彰!」

どこからか俺を呼ぶ声がして、周囲を見渡すと、大きな木の陰に半分隠れるようにしてこちらを見ている、叶夢の姿を見つけた。

「叶夢……!」

見送りに来てくれたんだ。俺は涙が出そうなほどうれしくなって、両親に「先に車に乗っていて」と告げ、彼のもとへ向かって一目散に走った。

そうして木の下で向き合った叶夢は、最初気まずそうにもじもじしていたが、やがて後ろ手に隠していた何かを俺の前に差し出した。

白い餅に包まれた、不格好な丸い大福……。もしかして、これを俺のために?



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