契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
一月中旬に行われたそのイベントは、パリで行われる日本の食文化を広めるためのパーティーだった。
定期的に開かれているこのイベントは毎回違うジャンルの食べ物を扱っているそうなのだけれど、今回は〝日本のお菓子〟がテーマ。
日本国内のあらゆるお菓子企業が広い会場内にブースを設けて、パリの人々にお菓子の魅力を伝えるのだ。
道重堂もこのイベントに呼ばれ、社長の彰さんに秘書の冬樹さん、本店の親方倉田さん、そのほかたくさんの関係者が海を越えてやってきた。
私もそのうちの一人で、普段は広報部にて仕事をしているものの、今回は彰さんの側近として一緒に来るように命じられた。
イベントの盛り上がりは上々で、フランスの人々が道重堂のお菓子を「セボン!」と瞳を輝かせて評してくれる姿には、社員としてもそうだし、いち道重堂ファンとしても感慨深いものがあった。
しかし、いつまでも呑気にしている場合ではない。
私たちの重要なミッションは、イベント後半に控えているのである。
今回招かれている企業のうち、実力と話題性を考慮して選ばれた二つの企業が、お客様の前でお菓子作りをして、その味や見た目などを競うというものだ。