契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

職人としての血が騒ぐのか、倉田さんはあっという間に倉庫を出て行ってしまった。

そして、入れ違うように倉庫に入ってきたのは久々に顔を合わせる平川さんだった。

……何を隠そう、道重堂と勝負をする相手企業は、彼が社長を務めるvanillaなのだ。

「よう。今、お前んとこの職人あわてて出てったけどどうした?」

「……足りない食材を調達しに行ったんだ」

彰さんが淡々と答えると、平川さんは手に持っていたワイングラスを傾け、中の透明な液体を一口飲むと、不敵に笑った。

「こんなぎりぎりに食材探し? 大丈夫かねえ道重堂は。パリじゃろくな日本酒は見つからないと思うけど」

そのセリフに、ぞわっと全身の毛が逆立つ感覚がした。

どうして彼は倉田さんが〝日本酒を探している〟と思ったの? それに、彼が飲んでいるそれは……?

「もしかして平川さんなんですか? 倉田さんの大事な吟醸酒を隠したのは……でも、前に道重堂とは〝正々堂々と勝負する〟って言ってくれたのに、どうして」

私は声を震わせ、おそるおそる平川さんに尋ねる。

だって彼は、彰さんのトラウマのことに責任を感じて、道重堂を変な風に敵対視するのはやめたんじゃなかったの?

すると彼はハハッと高らかに笑い、グラスの中の液体を揺らしながらこう言った。


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