契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
最初は私も同行して「妻です」なんて、付け焼刃のフランス語で澄ました挨拶をしていたけれど、途中から疲れてしまったため彰さんが気をきかせて「結奈はどこかで休んでいて」と言ってくれたのだ。
……それにしても、一人では暇だ。
なんて思いながら、会場の外にある広い庭のベンチに座り、観光ブックを眺めていたそのとき。
「あれ? 彰に放置されてんの?」
相変わらず人を不快にさせる物言いが聞こえて、私は顔を見るまでもなくその人物の正体がわかる。
「平川さん……。別に、放置されているわけでは」
「ふーん。ま、どうでもいいけど。ねえ、隣いい?」
「ダメって言っても座るんですよね?」
「ははっ。よくわかったね」
明るい笑みをこぼしながら、どかりとベンチに腰掛けた平川さん。
いったいまた何の嫌味を言われることやら……そんなふうに思っていたのに、彼しばらく無言で頭上の空を仰ぎ見ていた。
……静かな彼は、ちょっと気味が悪い。そんな失礼なことを思っていたら、不意にぽつりとこんなことを言った。
「……やっぱり、ダメだったな。俺、ハンデなんかつけても負けるのわかってたんだ」
「え……?」
それって、さっきのイベントでの勝負のこと?
始まる前は挑発的な態度をとっていたのに、今の彼はどこか弱気だ。