契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

私はむっとして、再び平川さんのもとへつかつか歩み寄ると、正面から彼を睨んで思い切り平手打ちした。

平川さんはぶたれた頬に手を当て、何が起こったかわからないように呆然としていた。

「ださいのは、あなたのほうじゃない」

「え……?」

「いつだって自分は〝本気じゃない〟みたいな顔して、正面から人と向き合うのを避けて……そんな人に、本気で恋愛している私たちを馬鹿にする権利なんてない。ださくたって、青臭くたって、私は彰さんを愛している。その気持ちを踏みにじるようなこと言わないで!」

畳みかけるように一気に言い放ち、最後にフンと鼻を鳴らして彰さんのもとへ戻る。

彰さんは優しい笑みで私の頭をポンポン撫で、それから平川さんに向かってこう言った。

「前にも言ったけど……お前には、自分の力で未来を切り開く力がある。じゃなきゃ、vanillaをあそこまで成長させることなんてできない。もっと、その力を自分や他人を幸せにするために使ってもいいんじゃないのか? 他人を蹴落としたりするんじゃなく、正当なやり方で」

彰さんは、平川さんの本来の姿を知る数少ない理解者なはず。

そんな彼の言葉が、平川さんにちゃんと伝われば――。そんな願いを込めて、平川さんの後ろ姿を見つめる。


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