契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

はじめは落ち込んだようにうなだれていた彼だったけれど、やがて「あ~もう!」と声を荒立てて、金髪頭をガシガシと掻いて立ち上がった。

そして、私たち二人のもとへ歩み寄ってくると、すれ違いざまにぴたりと足を止め、さも面倒くさそうに言った。

「……ったく、説教くさい夫婦だな。わかったよもう。……とりあえず、今日の勝負に裏があったこと、それなのに負けたこと、何も知らない毬亜に謝る。……あと」

まっすぐ前を見ていた彼が、私たちを交互に見つめてひとこと。

「幸せになんねーと、許さないから」

ぶっきらぼうな言い方だったけど、彼なりの照れ隠しだろう。

まさか平川さんから祝福の言葉をもらえるとは思っていなかったから、驚くのと同時にじわじわと優しい気持ちが胸に広がる。

そのまま私たちのもとを去ろうとする彼の背中に、私は「言われなくても!」と明るい声で返した。

平川さんは振り向かなかったけれど、彼なら微笑んでくれたに違いないと、私は信じたのだった。



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