契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
倉田さんにそんな風に褒められ、恥ずかしい反面誇らしくなった。
なぜなら私は、自他ともに認める熱烈な和菓子マニア。
中でも、由緒あるこの道重堂の和菓子は、やはり他とは違う特別なおいしさがあり、週に三回は食べたくなってしまうほどのファンだ。
そうして頻繁に店に通ううち、常連の私のことは従業員の間で噂になったらしい。
その噂を聞きつけ、私の和菓子愛に感心した倉田さんとも、こうして親しく話ができるようになった。
「では。お話もうかがって写真も取れたことだし、そろそろ食べてもいいでしょうかね……?」
待ちきれず菓子楊枝を手にする私に、倉田さんはおかしそうに吹き出して、「どうぞ」と言ってくれる。
ああ幸せ……取材とはいえ、発売前の新作和菓子を誰より先に食べられるなんて……!
感激に浸りつつ、まずは柿をかたどった橙色の練りきりにそうっと楊枝を入れ、ぱくんと口に含んだ。
「んんん~……この上品な甘さ、舌の上でさらりと溶ける餡子の余韻……ああ、消えないで」
呟きながら目を閉じ、うっとりとその味に浸っていた、そのとき。