契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
そっか……。彰さんはそんな経験が多かったから、容姿も家柄も関係なく、和菓子愛だけは誇れる私を選んだんだ。それには納得だけれど、ひとつだけ物申したい。
「その女性たち、見る目なさすぎます。和菓子だってめちゃくちゃフォトジェニックじゃないですか! こないだ倉田さんが作ってくれたのも素晴らしかったですし」
洋菓子のような派手さはないかもしれないけれど、優雅で奥ゆかしい美が和菓子にはある。芸術作品といったって過言ではないくらいだ。
私が熱弁をふるうと、彰さんは呆れたように鼻を鳴らして笑った。
「お前な……夫より和菓子をかばうか」
「そりゃ、今のところ私の愛するものランキング、一位は和菓子で二位が彰さんですから」
順番に指を立てて宣言したら、彰さんはなぜかうれしそうに目元を緩ませた。
「それなら許そう、思ったより上位だ。俺はてっきり五位以内はすべて食べ物かと」
「あっ。……言われてみればそうかも」
考え込む仕草をした私を置いて、彰さんは家の方に向かってすたすた歩きながら言う。