契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

月曜日になり、私は出社してすぐに上司や同僚に結婚報告をした。

あまりに突然なので驚かれはしたけれど、基本的にゆるい会社なので特に咎められることはなかった。

むしろ〝どうやって道重堂の御曹司に取り入ったのか〟と興味津々に聞かれ、『この会社で培ったグルメ関連の知識がよかったみたいです』と当たり障りのない返事をしておいた。

しかし、そんな答えで納得するはずもない同僚がひとりいる。

「知り合った時と場所、親密になった理由と状況、結婚に至る流れまで、すべて白状せよ」

昼休みに訪れたイタリアンの店で、私は花ちゃんに尋問されていた。

私が「まず食べてから……」と濁しつつ注文したナポリタンにフォークを刺すと、テーブルをバン!と叩かれて睨みつけられた。

怖いよ、花ちゃん……。

その後輩とは思えない威圧感に負け、彼女にだけは真実を告白することにした。

「……契約結婚?」

「そう。私にあんなハイスペックな男性に取り入る術があるわけないでしょ? そもそも彼はあんまり結婚にロマンチックな理想とか抱いていないし、私のことは利用価値のある〝和菓子食べるマシーン〟としてそばに置いておきたいだけなのよ」

私はナポリタンをひと口も食べないままそこまで話し、やっと食事にありつけるとフォークを持ち直した。



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