契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
私が紙ナプキンで口元を押さえたまま黙りこくっていると、花ちゃんが信じられないという表情になって言う。
「先輩〝ぽっちゃり限定婚活パーティー〟は体目当てだから嫌だとか言ってたのに、契約結婚の相手に体を許すなんて、ダメですよ! 求められても拒まないと!」
「いやいや、別に許してないって! キスしただけ!」
強めに反論してから、あっ……と失言に気づいたけれど後の祭。
「キスしたんですか? あのイケメンと?」
花ちゃんが、大きな目をさらに見開いて唖然とする。
「い……一回だけだよ? ちゅって、ただぶつかるだけみたいなやつ!」
必死に言い訳しながら、なぜか顔が熱くなる。照れているみたいでいやなのに、なかなか治まってくれない。
「結奈先輩が、乙女だ……」
花ちゃんはぼそりとつぶやいたかと思うと、パッと破顔した。
「いいじゃないですか! 契約結婚から始まる本気の恋!」
「は?」
なに? 本気の恋って……なぜそうなった?
「いつかふたりに本当の愛が芽生えるように、祈ってますから!」
「いや、別に私……」
「あ~萌えるなぁ。あの色っぽいイケメンが結奈先輩を溺愛しちゃう図を思い浮かべると」