契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

ダメだ。花ちゃん、なんかうっとりしてる……。

私はすっかり冷めてぼそぼそになっている彼女のカルボナーラをもったいないと思いつつ、残りのナポリタンをもそもそ口に運ぶ。

そして思い浮かべるのは、二日酔いで痛む頭を押さえつつ出勤していった、今朝の彰さんの姿。

少し顔色が悪かったけど、大丈夫かな……。

本気の恋だなんて強い想いには至ってないけれど、一緒に暮らし始めた彼に情が湧き始めているのは事実。

胃腸が弱っているであろう彼のために、今日の夜はあっさりした夕食を作ってあげようとひとり静かに決意した。



その日、彰さんの帰宅は深夜近くになってからだった。彼の体調が心配で眠れずにいた私は、玄関まで出向いて声をかける。

「おかえりなさい。遅くまでお疲れさまでした」

優しく労ったつもりだったけれど、彰さんの反応はそっけなかった。

「起きてたのか。先に寝ててよかったのに」

無表情に言って靴を脱ぎ、すたすたと寝室に向かう。私はその背中を慌てて追いかけ、寝室のドアに手をかけた彼に言った。



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