契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「あの、お腹空いてませんか? そうめん買って来たんです。先にお風呂が良ければその間に準備しときます」
ただのそうめんじゃ寂しいかと思って、アレンジ用にシラスや梅干し、納豆などあれこれ買ってきたのだ。
「……いや、食事は済ませてきたから」
けれど、彰さんは抑揚のない声でそれだけ言って部屋に引っ込んでしまった。気合十分だった私は、しょんぼり肩を落とす。
そっか……こんなに遅くなったんだものね。何も食べてこないってことはないか。残念だけどまた次の機会にしよう。手の込んだ料理ってわけでもないし。
とぼとぼキッチンに向かい、出しっぱなしだった調理道具を片付けた。
キッチンがきれいになると同時にひとつ大きなあくびが出て、そろそろ寝なきゃと目をこすって廊下に出る。
そして寝室の前に来ると、着替えを済ませた彰さんがちょうどドアから出てきた。その予想外な姿に、私は思わず声を漏らす。
「浴衣……?」
彼が身に着けていたのは、縦にかすかなストライプの入った黒い浴衣。
軽く着付けただけらしく胸元が広く開いていて、ドキッとするのと同時に目のやり場に困った。