契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
ダメだ……彰さんの和服姿って、色気がありすぎる。
私がぎこちなく視線を泳がせたのを見て、彰さんは自分の服装が原因だと気づいたようだ。
「ああ……そうか、見慣れないか。俺、基本家にいるときは浴衣なんだ」
そう言って長い前髪をかき上げる姿も妖艶で、ますますどこを見たらいいかわからない。
毎日この姿を見せらていれば、少しずつ耐性もつくだろうか。
「そ、そうだったんですね。これからお風呂ですか?」
「そうさせてもらおうと思ってるけど……その前にちょっとお前に話が」
「話?」
きょとんとして聞き返したら、彼は改まって咳ばらいをし、気まずそうに切り出す。
「その……さっきは悪かった。苦手なんだ、こういうの」
「さっき?」
私、何か彼に謝られるようなことされたっけ? それに〝こういうの〟が何を示すのかも、よくわからない。
彰さんは不思議そうな私をちらちらと見たかと思うと、観念したようにため息をついて言った。
「家に帰ったら誰かが待ってるとか……飯、作ってもらえるとか」
「えっ?」
どうしてだろう。ごく普通の家庭の在り方だと思うんだけど……。