契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

無事に再会を果たした母娘に別れを告げ、今度こそ駐車場に向かって歩き出す途中で、彰さんがぽつりとつぶやく。

「よかったな……。無事にお母さん見つかって」

「そうですね。海ってけっこう自分の位置を見失っちゃうから」

私はごく普通の〝迷子〟を想定して、何気なく答えたのだけれど。

「……あの母親が、ちゃんとあの子を捜していてよかった」

「え?」

母親がいなくなった我が子を捜すって……至極当たり前のことだと思うんだけど。

怪訝な言葉に思わず隣を歩く彼を見上げたけれど、彼の瞳はうつろでどこを見ているのかわからない。

その様子が、まるで彼自身が迷子になってしまったように見えて、私は慌ててしまう。

「あーきーらーさんっ」

つないだ手をブンブン振って呼びかけたら、はっとした彼がこちらを向く。

「……悪い。変なこと言った。そういえば、結奈は空腹で限界だったな」

何事もなかったかのように軽口をたたく彼にホッとしつつ、さっきのは何だったのだろうとモヤモヤする思いも胸に渦巻いていた。



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