上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※

「もしもし」

「亜子か? オフクロが倒れた!」


一瞬目の前が真っ暗になって私の耳は周りの音が消えて受話器の向こう側にいる涼太の声しか聞こえなくなっていた。

「今総合病院に運ばれてきたんだ。これから手術になる。亜子帰ってこれるか?」


なんて返事をしたのか覚えてないほど私はすぐに電話を切ってオフィスをあとにした。


1階に降りてビルを出たところで後ろから腕を掴まれて止められた。


「亜子、どうした?」

結城課長が驚いた顔をして私を見ている。

「母が……倒れたって……。すみません、私帰ります」

「待てって! 俺が連れて行く。これから出れば車の方が早い」


私は地下の駐車場に置いてある結城課長の車に半ば無理矢理乗せられていた。


「亜子、どこの病院?」

「…………地元の総合病院です」


結城課長はナビの画面を操作してガイダンスが流れると駐車場から動き始めた。


涼太からのラインには倒れた時にはすでに意識がない状態だったと書いてある。
それがどういう状態なのか今の私には何も考えられないでいた。


数日前はあんなに元気だったのに……。
いつも私のことを気にかけてくれて大切にされていた。
お母さんの笑顔しか思い出せない……。


膝の上に置いてある私の手を横から包み込むように結城課長の手が握りしめてくれた。

「大丈夫か……?」

私はいつのまにか大粒の涙を流して泣いていた。



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