上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
社長が来るまでもう少し見せてもらおうと俺は再度ファイルに目を通していると、すぐにドアが開き森山さんともう1人の男性が入って来る。
足早に入って来て、自らを社長と名乗る人物を見て俺は一瞬何が起きたのか分からなかった。
「結城さんじゃないですか!」
「え? 藤井さんのお兄さんがなぜ?」
「あぁ、昨日は名刺を渡してませんでしたね。失礼しました。改めまして社長の藤井涼太と申します」
状況が掴めない俺は反射的に名刺を渡すが、亜子の兄、いや藤井社長からすれば俺はまだ亜子の勤める会社の人間だ。名刺はリゾートホテル縁の結城尊として印字されている。それに気づいた俺は慌てて説明すると藤井社長は理解してくれたようだった。
「結城さん、もしよければ外に出ませんか?
私昨日からロクな物食べてないんですよ。すぐそこで知り合いが上手い喫茶店をしてるんですよ」
「ええ、私は構いませんよ」
外へ出て歩くこと2.3分、本当にすぐそこに喫茶店があった。
そこは昔ながらの喫茶店といった感じで、古いガラス格子のドアを開けると昭和感溢れるレトロな店内だ。
証明はやや薄暗く、赤茶色のソファー型の席が更に昔らしさを出している。
「ここはなんでも美味いですよ。おすすめはナポリタンとミックスサンド、それからハンバーグライスですかね。私はハンバーグライスにします」
「迷いますね。じゃあ私も同じものをお願いします」
注文を受けに来た30代半ばの女性に伝えると奥の厨房へ向かっていった。
「先程はすみませんでした。森山から連絡をもらっていたのですが、亜子の上司の結城さんとリゾートホテル縁の結城さんが同一人物とは結びつきませんでした」
「いえ、私も驚きすごて言葉が出ませんでした。その後お母さんと藤井さんの様子はいかがですか?」
「母の症状は安定しています。このまま回復をしていけばあと数日で集中治療室から出れるそうです。亜子の様子ですが……あれから少しして目を覚ましずっと病院にいます。今朝私が家に戻る時に一緒に帰り、泊まる用意をしてそのまま病院に戻りました」
藤井社長はそこまで言うと視線を落とした。
彼もまたロクに寝ていないのだろう。疲れが出てるように見える。