上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「じつは社長から今朝急な用ができてしまい、少し遅れると連絡がありまして。もうじき見えると思いますのでよろしければそれまでうちの商品を見ませんか? 一点一点オーダーメイドなので写真でしかありませんが、オーダー品でなくてよければ表にございますよ」
「では、こちらの写真を見せていただきます」
森山さんは50代といったとこだろうか?
スーツをきっちり着こなし、中に合わせるカラーシャツとネクタイもセンスがあり何より清潔感がある。
橋本さんとは180度違うな。
俺は社長が来るまでオーダーメイド品の写真をまとめたファイルに目を通した。
オーダーメイド品とあってどれも雰囲気が全然違う。この品をオーダーした人はきっと昔ながらの日本家屋のような家に住んでいるのだろう。
一方でこちらの品はずいぶんとモダンなデザインだ。どちらかと言うとこちらの方が今っぽく感じる。
「いかがですか? 色んなタイプがあって面白くないですか?」
「ええ、これなんか同じ型ですよね? タイプを変えるだけでこんなに雰囲気が違うものになるなんて」
「そうですね。どちらも同じ型のチェストになりますが、こちらのお客様は娘さんの結婚のお祝いにお作りしたものなんです。当時賃貸にお住みということでしたので、全体的にシンプルにお作りして今後住まいが変わっても馴染みやすいようにデザインしました」
「もしかして全てのお客様を覚えてらっしゃるのですか?」
嘘だろ?
相当な数だぞ。
分厚いファイルは1冊だけじゃない。
「当店はオーダーを主としてますからね、お客様のお顔や依頼内容を聞くことでイメージが生まれます。デザイナーや製造者、私たち販売員はそれらを把握することで自然と覚えてしまうのです」
ソファーに掛ける俺の横に立つ森山さんは熱心に説明してくれる。
「これは当社の会長と社長の意向でもあるのです。特に会長は一つとして同じものはないというオーダーならではの良さとお客様一人一人との縁を大切にしておられるのです。お、噂をしてたら社長が到着したようです。少々お待ちください」
森山さんはそう言って俺を残して部屋から出ていった。