上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※


昨日、仕事の途中で来たからスーツ姿のままだった私は、家に帰ってからシャワーを浴びてメイクも簡単に済ませジーンズにカーディガンといったカジュアルな服を着て再び涼太に送ってもらった。

病院に向かう途中、私は車の中で会社に電話をして訳を話すとしばらくお休みさせてもらえることになった。


病院の入り口に入るとまだ受診時間でもないのに自動受付機の前にはものすごい人数の人が列を作って並んでいる。

私たちはその列を横切るように病棟専用のエレベーターに乗って、お母さんのいる病室へ入ると、お父さんの姿が見当たらない代わりに看護師さんがモニターを見ながら記録をしていた。

「お父さんでしたらちょうど今先生とお話をしに行かれましたよ」

看護師さんに教えてもらった部屋へ向かうと、40代くらいの優しい目をした先生と対面して座るお父さんの姿があった。

「母の子供です。一緒に話を聞かせてください」

「どうぞ、掛けてください」

涼太は部屋に入るなり慌てた様子で言うと、先生は快く了承してくれて私たちはお父さんの隣に座った。
壁に掛かっている時計の秒針の音が静まり返った部屋の中でやけに響いて聞こえる。


和かな顔というわけではなく、かと言って険しい顔でもない先生の表情からは、これから何を言われるのか想像がつかない。

ほんの数秒がとてつもなく長い時間に感じる中目の前の先生は静かに口を開いた。

「藤井裕子さんの手術の経過は安定してますよ。順調にいけば予定より少し早くICUから出れるでしょう」

先生の言葉を聞いて私たちはホッと胸をなでおろし、3人して顔を見合わせるとお父さんだけ硬い表情をしている。

「先生、裕子は今後元の生活ができるようになるんでしょうか?」

お父さんの言葉に私の心臓は再び大きな音を立てはじめた。


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