上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※


「くも膜下出血の場合、後遺症はいろいろとありますが必ずではありません。こればかりは経過を見てみないとまだなんとも言えません」

「後遺症とは例えばどんなものがあるのですか?」

「そうですね、例えば体の一部に麻痺が残ったり失語症や記憶障害があります。最近までの記憶が思い出せなくなり、子供の頃や若い頃までの一定の記憶だけが残って自身もその時の年齢に戻るといった状態になることです。ただ、そういったものはリハビリによって戻る人が多いように思えますので、あまり気を落とさないでください」

私たち3人に伝える先生の言葉は、どこか淡々としていてかえって私の胸に鋭く突き刺さる。


お母さんに後遺症が残ったら……。


一瞬にして地の底に突き落とされた気がして私は動揺を隠せなかった。



先生の話を聞いた後、涼太は一度会社に向かった。今週末に来る予定だったお客様が急遽今日になったらしい。
東京の大きな会社から依頼がきているようで、あまり乗り気のしないお父さんと涼太は何度か断ったけど熱心に頼み込んでくるから一度話だけでもということになったらしい。


こんな時なのに仕事に行かなきゃならない涼太の心は大丈夫なのかな。
本当は涼太の方が私よりもずっと辛いはずなのに……。


お父さんと病室へ戻ると意識の戻らないお母さんは変わらず眠っている。
穏やかな顔をしてただ眠っているだけみたい。
目が覚めたら私の名前を呼んでくれる?



< 135 / 183 >

この作品をシェア

pagetop