上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※


結城課長とはあれから何回か電話で話すことがあった。
特にこれといったこともなく、お母さんの具合や私の近況を聞かれるくらい。元々、お互い長電話するようなタイプでもないし甘い言葉を言い合う仲でもないから少し話してすぐに切る感じだ。
それでも結城課長の優しさが伝わって声を聞くだけで胸の奥が温かくなる。



「亜子、先にお風呂入っていいわよ」

夕飯の片付けを終えるとお母さんが声をかけてくれた。私はお風呂に入った後明日の朝食の下準備をする為にリビングに行くと、お母さんはソファーに座って私が書いてるインテリアのデザイン画のノートを見ていた。

「亜子ずいぶん上達したわね! やっぱり若い子は飲み込みが早いわ」

納得いかないと次に進めない私の性格上、描いたデザインはまだ3作しかないのだけれどお母さんに指摘された箇所を修正しながらやっと納得のいくものが書けた作品だ。

「そうかな。でもお母さんが教えてくれなかったらこんなに良い感じに書けなかったよ」

「じゃあ、私の教え方のおかげね! でも亜子は才能あるわね。仕事でも褒められてるんじゃないの?」

「そんなことないよ。依頼通りに作ってみても一度で通ることなんてないもん」

仕事という言葉に不意に胸が騒ついた。
お母さんはそんな私をお見通しと言わんばかりに話を切り出した。


「亜子、東京に帰っていいのよ。お母さんもこの通り元気になったし定期的に病院へ行っているから心配ないわ」

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