上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
ここから新幹線に乗って徒歩も含めれば1時間くらいで行けるけど……。
「何時に行けばいいの?」
「12時に中軽井沢駅から少しした所にあるホテルのsouvenir(スヴニール)と言うフランス料理の店で待ち合わせだ」
souvenir(スヴニール)とは東京に本店がある超有名店だ。人気があってなかなか予約が取れないって聞いたことがある。
涼太に言われて携帯で中軽井沢までの行き方を検索する。
これから準備しても余裕で間に合いそうだ。
「私なんかじゃ話にならないかもしれないよ」
「大丈夫! きっとうまくいくよ! 絶対遅れるなよ、じゃないと相手ががっかりするからさ。今日は俺たちも夜まで帰ってこれないからゆっくりしてこいよ」
涼太の自信はどこからくるのか?
デザインしかしていない私は、使う木材の種類くらいは知っているけど深いところを突かれたら無理なのに。
私は美容室を諦め軽井沢へ行くことに決めて、朝食を済ませた後準備をして駅へと向かった。
新幹線に乗ってる間、資料を見ながらぶつぶつと呪文でも唱えるように何度も復唱する。
隣に座っている人が気持ち悪そうにチラチラ見ているけど気にしない気にしない。
何事も最初の印象が大事だと思ってスーツを着て行こうと思ったら、涼太が「普段の服で行け」と言った。
なんでも先方は堅苦しいのを好まない方で普通に食事をしながら話をしたいらしい。
普通の服と言われても逆に困る。
しかもあの超人気店だしカジュアルすぎてもおかしいと言うものだ。
クローゼットの中にある服を見ながら迷ったあげく結局、ブルーグレーのフレアワンピースを着ることにして上には黒の薄手コートを羽織るといった地味コーデとなった。