ヴァンパイア夜曲
優しく私の頭を撫でて涙を隠したマーゴット。
もらった言葉を噛みしめるように何度も頷くと、彼女は、私をそっと見つめて言葉を続けた。
「そうじゃレイシア。お前がここを出ると言い出したときに、伝えようと思っていたことがある」
「伝えようと思っていたこと…?」
「お前の兄のことじゃ」
予想もしていなかった言葉に声が出ない。
シドも、ちらりとマーゴットを見つめていた。
「お前の兄が姿を消す前、あいつはこの部屋に来た。そして私に言ったのじゃ。復讐のためにここを出るということを」
「復讐…?」
ぞくり、と背筋が震えた。
(まさか、お兄ちゃんは両親を殺し城の仲間をスティグマに陥れたあの男を追って…?)
マーゴットは、血の気が引いた私に向かって静かに続ける。
「ここからはるか東の地にノスフェラトゥという大きなヴァンパイア組織があると聞く。お前の兄はそこへ向かうと言っておった」
東の地。
ベンタウンから出たこともない私には未知の世界だ。