ヴァンパイア夜曲
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時折、水の滴る音が暗いトンネルに響く。
地下水路は分かれ道が少なく地上の迷路よりはマシなものの、壁に取り付けられたランプは心もとなく、揺れる炎が怪しげな雰囲気を醸し出していた。
湿度が高いトンネルは想像以上に暗く、決して居心地が良いものではない。夜の気候も相まって、なんとなく身震いがするほどだ。
(こんなところで急に人が出て来たりしたら、きっと叫びまくって倒れるわ…)
思わず辺りを見回して、ごくり、と喉を鳴らすと、隣を歩いていたシドが小さく息を漏らす。
「怖いのかよ」
「えっ!!そ、そんなわけないじゃない」
「じゃあ、何だ。“その手”は」
指摘されて視線を落とす私。無意識のうちにシドのコートを掴んでいたらしい。
「お前が行こうって言ったんだろ」
「そ、そうよ!近道なんだから。別に私は、怖いなんて一言も…」
「おい、なんか声しねえか?」
「えっ!?」
「はっ、嘘だよ」
(この神様冒涜男…!いっぺんバチ当たれ…っ!)