ヴァンパイア夜曲
**
「お前、本当に行くつもりかよ」
ーー日が暮れた午後7時半。
約束の時間まで30分を切った頃、シドが私の部屋の扉を叩いた。
招き入れるが、彼は相変わらずニコリともしない。腕組みをして壁に寄りかかる様はまさに殺し屋オーラがダダ漏れだ。
「もちろん。せっかく誘ってくれたんだもの。聞きたいことがあるとも言っていたし、宿から屋敷までは遠くないから迷う心配もないと思うわ」
さらりと答えると、彼は表情一つ変えずに言葉を続ける。
「“お誘い”なんて、あいつの常套手段だろ。見てくれがいい奴にロクな男はいねえぞ」
それを修道院のシスター達にきゃーきゃー言われていたあんたが言うか?
「ランディはいい人よ。実際、私たちを助けてくれたじゃない。紳士的だし、穏やかでニコニコしてるし。素敵だと思うわ」
シドは急に黙り込む。
不思議に思って彼の方へ目をやると、腕組みをしたシドは、はぁ、と気だるそうにため息をついた。
「分かった。そんなにアイツのことが気にいったんならもう何も言わねえ。俺は寝る」
「えっ?!」