恋愛イデアル。
浜辺の砂の城。
『波の音を聴くのは嫌だ。
積み重ねては崩れ落ちる浜辺の砂の城を思い出すから』

長月遥がうたた寝。
四月。
春の日差しだ。

陽気がうららかに。

イデアルと俺は教室でそれを見ていた。

「積み上げては崩れ落ちる浜辺の砂の城か」
とイデアル。

イデアルはそれを虚構だと断ずるにはあまりに慎重であった。

長月遥の助言を待つ。

「忍耐を」と長月遥。
「ふむ。
そうだなあ」とイデアル。

時がただ過ぎていくのに。
と俺は感じる。
海辺の繰り返す波とは時間でもあった。
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