恋愛イデアル。
積み重なる歴史。
「そういえば」と長月遥。雑談だ。

学校からの帰り道だった。

イデアルとリンネが同行する。

チゲやスガヤといった湿地帯。

「狐のアヤカシが水守市にあったとか」
「水路調査もしたよな」とイデアル。

「水路調査?」とリンネ。

「ああ。
この水守市は湿地帯だったんだが、明治期に干拓された。

で、水路を伝馬船(でんまぶね)が行き交っていたとか」とイデアル。

「伝馬船?」とリンネ。

「手漕ぎの和船だな。
大きさはごく小さい」とイデアル。

「で、水路調査はその歴史を振り返ったわけ」と長月遥。

「ふーん。
そうなんだな」とリンネ。

晩夏が過ぎていく。
それはまるで黄金のなかの日差しのように当たり前だったのだ。
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