365日のラブストーリー
「そうですね。夜の場合はそうじゃなければいけないのかな、とも思います。何年か前に知人から勧められて、強羅の旅館まで懐石料理を食べに行ったんですよ。

食材の旨みを活かした調理方法で、他ではちょっと出てこないようなものが食べられるのですが、なぜかまた行こうという気にならないんですよね。味には満足していたはずなのですが。夕食としては少し物足りなく感じてしまったからかもしれません。

それから、どんなものをいつ食べると美味しく感じるのか、ということを意識して食事をとるようになりました」

 話を聞きながら、有紗は感心して頷いていた。食事にはこだわりがある方だが、時間のことまで考えたことはなかった。

家族での外食は毎度大ボリュームのコース料理で、単純に食べたいときに思いついたものを食べていただけだ。いつそれを食べたらいちばん美味しく感じるのかなんて、父や母も考えたことはないだろう。

今度実家に電話をする機会があれば、今の神長の話をそのまま母に伝えてみようと思った。綿貫家で食事革命が起こるかもしれない。
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