365日のラブストーリー
「わたし、どうして神長さんが朝食に誘ってくださったのかがよくわかりました。朝のこの時間が、シンプルなものがいちばん美味しくいただけるっていうことですよね？」

「そういうことです」

　友人と食事の話をしても、まずこの方向には発展しないだろう。どこにでもある話題すら新鮮にかんじさせてしまうのも神長の魅力なのかもしれない。

そのおかげか、緊張のあまり何も話が出来ないのではないかという不安はいつのまにか消えている。

（不思議な人）
　有紗は整った横顔をじっと見つめた。神長は今日、紺のジャケットにサックスブルーのシャツ、黒のパンツを合わせたきれいめなスタイルだ。

左手首に高級感のある腕時計を合わせて崩しすぎないようにしているが、仕事や食事だけではなく、服装もシンプルを好むのかもしれない。

もしかしたら人付き合いもそうなのだろうか。有紗はふと疑問に思った。
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