365日のラブストーリー
「大丈夫です、わかってますから」

 先に階段を下るように促されて、有紗は神長の前に出た。外に出ると、途端に風が吹きつけてきた。サンルームの日差しで温まった身体から熱がさらわれていく。

「……神長さんは、恋人から自分のいいところを気付かせてもらったりすることはあるんですか?」
 有紗は思い切って訊いてみた。

「そうですね。大切なことを気付かせてくれる人がいました。よく『人は恋をすると変わる』なんて言いますがその意味もよくわかりました。相手の言葉を素直に受け止める分、その人の影響を強く受けてしまうのでしょうね」

「わたし、その言葉の意味は『好きな人から嫌われないために、自分を相手に合わせようとするから』だと思ってました」

「それは、あまり良い恋をしてないですね」
 どこか冗談めかした口調で言って、神長が笑った。

「神長さんに影響を与える人は、どんな人なんだろうって、思っちゃいました」
< 161 / 489 >

この作品をシェア

pagetop