365日のラブストーリー
「いや、すみません。子ども迎えに行ったりとかいろいろあるんで」
「ああ、そうだったね。残念。夏だったら、休みの日に家族も誘ってみんなでバーベキューとかいけたんだけど」

 宇美はいったい何を考えているのだろう。気が気じゃないまま凍り付く有紗に、千晃が訝しげな視線を向けてきた。

「もしかして、綿貫さんも飲みに行くの?」
 なんてことない言葉がとても物言いたげに感じるのは、後ろめたさがあるからだろうか。

「一応そのつもりです」
 まさか自分の提案だとは言い出せずに、有紗はうつむいた。

「ふうん」
 土曜日に遊ぶ約束をしていたから、前日の夜は仕事仲間と飲みに行くのは控えて欲しいとか、そういうことなのだろうか。

 顧客管理課の男性がホールに入ってきて、会話が止まる。おつかれさまです、と会釈したきり無言でエレベーターに乗り込んだ。千晃ともうひとりの男性は総務部のフロアに着くとさっさと降りていった。
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