365日のラブストーリー
「わたし、人の気持ちがもっとわかったら良いのにって思ってるんです。知りたいと思う人がいるんですけど、一生懸命考えてみてもやっぱり肝心なことはわからないままで。時間をかけてお話をする以外に、なにか方法がないかな、なんて」

「その答えを、綿貫さんはもう知っていると思いますけれど」
 神長はテーブルの上に手のひらを出した。

「あ……」
 有紗ははっとした。肌が触れあうとその人の心の動きや興味が伝わってくる。神長に触れて、たしかにそれを感じたはずだった。

「言ってしまえば、感覚的に理解するという方法の究極がセックスだと思います」
「せ……せ?」

「すみません、驚かせて。とにかく、触れるという行為は感情を伝えるための優れた手段ということです」

 ビールを一気に飲み干して、有紗は同じものをもう一杯注文する。追いかけるように神長もグラスは空けて「二つで」と訂正した。口にするのを憚るような言葉に動揺する有紗とは反対に、神長の表情はまるで揺るがない。
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