365日のラブストーリー
「わたしは……」
「うん」

 初めは強引さに驚くばかりで閉口していたが、次第に共通の趣味が見つかって、子どもに向ける優しい眼差しにかいま未来を想像し、愛情をはっきりと言葉で向けられるうちに自分の心も傾くのではないかと思っていた。

「森住さんにもっとちゃんと向き合えていたら、わたしは幸せになれたんだと思います。だけど……」

 それ以上言葉が続かなかった。なぜこんな時に、楽しかったことばかり思い出すのだろう。心が苦しくなるだけだというのに。

「それが出来なかった、ってことだよな。もう、何も我慢しなくていいから。……有紗ちゃんにとっての、たくさんの初めてが俺でごめん」

 有紗は首を横に振った。

「わたしのこと好きって言ってくれたのは、森住さんが初めてでした。気の利いたことひとつも言えない、何も出来ないわたしのことを好きになってくれる人がいるんだって思ったら、申し訳なくて」

「ああ、なんでまたそこで申し訳なくなっちゃうのかわかんねえけど……、たぶん俺には有紗ちゃんの中にある『申し訳ない』を変えてあげられる力はないんだろうなあ」

 力の抜けた笑みをこぼし、千晃は声をあらためた。
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