365日のラブストーリー
 深夜便でも、小さな子どもを連れた家族連れの姿も多かった。よく眠れなかったり、あたりの様子が変わってしまったことに驚いてしまったのだろう。有紗自身も幼い頃フランスに連れて行かれ「家に帰る」と大泣きして困らせたことがあったと聞いている。

(おばあちゃんがケーキの美味しいカフェに連れて行ってくれて、ぴたっと泣き止んじゃったって聞いてたけど)

 甘いお菓子がなによりも心を和ませてくれたのだ。きっと今泣いている子どももパンケーキを食べれば元気が出るはずだ。

 微笑ましい気持ちで振り返ると、行列の後ろに見覚えのある顔があって、有紗はすぐに前を向く。

(どうして、ここに森住さんが)

 昔友人から、社内恋愛中の恋人とグアム旅行に出かけたら、同じ会社の人にばったり出会ったしまったという話をきいたことがある。旅行者のほとんどが狭いエリアに集まっているため、日程がかぶるとそんなこともあるのかもしれない。
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