365日のラブストーリー
(まさか、森住さんまで神長さんに会いに来た? 坂巻さんは午後着って言ってたけど……別便で他の人までくるなんて)

 並んでいる間は身を縮めていればごまかせるかもしれないが、今はそれで事なきを得ても店内に入れば絶対に気づかれる。
 有紗はスマートフォンにかじりつくようにして、Renに相談を持ちかける。

『どうしよう、グアムに森住さんと心暖ちゃんがいる。なぜか同じ店の行列に並んでるよ、まだ気づかれてないけど。列から抜けたら目立っちゃうし』

『Alissa逃げたらだめだよ。ずっと心暖ちゃんのこと気にしていたよね』

 指摘を受けて、胸がずきんと痛む。いつも会うのを楽しみにしてくれていた心暖を裏切ってしまった後ろめたさは、ずっと心のどこかにあった。

 鼓動を落ち着けようとして、深呼吸をする。そのあいだにまたRenがメッセージを送ってきた。

『落ち着いて、Alissa。母親の代わりになってあげられない、って負い目は一方的なものかもしれないよ。廉のときと同じでいいんだよ。肩書きに縛られない、Alissaと心暖ちゃんの関係は?』
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