365日のラブストーリー
 有紗と神長は顔を見合わせた。付き合ってから変わったことがあるとすれば、互いを呼ぶときの名が、ファーストネームになったということだけだ。会話に違和感を覚えなかったから忘れていたが、普通は言葉遣いも変わるものなのかもしれない。

「でもそんなことはなんでもいいわね。さっき二人の話を聞いていたら……有紗はほんとうに幸せね」

 何を聞いてそう言っているのかはわからないが、有紗は頷いておいた。母はもしかしたら、ほんとうは二人の心にまだ距離があるのに、結婚を急かすようなことを言ってしまったとのではないかと、気にしていたのかもしれない。

「それじゃお休みなさい。あ、そうそう……。お父さんはいびきかいて寝てるから、多少の声なら心配しなくても大丈夫だからね。部屋を掃除するときにも気付かれないように、ちゃんと片付けてあげるから」

 不気味な笑みを顔に残したまま、母は部屋をあとにした。

「強烈な牽制になりましたね」
 神長は笑いをかみ殺しながら言う。
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