365日のラブストーリー
「……仕方ないですね。どうぞ、有紗の自由に」

 真っ直ぐ伸ばされた手に触れる。恥ずかしがり屋の彼は、どんな顔を見せてくれるだろう。優しく下がった目尻にたくさんの愛を感じて、有紗は堪らなくなった。



 何かがカチカチと規則的に鳴り続けている。

 ぼんやりと聞いていたそれがウインカーの音だと気付いて、有紗は目を覚ました。いつの間にか助手席のシートは倒されて、膝の上にはブランケットがかけられている。実家からの帰り道、午後になって日差しが暖かくなり、眠ってしまっていたらしかった。

 有紗は身体を起こさずに、ハンドルを握る神長の横顔を盗み見た。目を覚ましたときに、隣に好きな人がいて、自分だけがじっと相手を見つめていられるというのも、貴重なひとときだ。

「寝ていてもいいですよ」
 ふいに神長が振り向いた。

「わたし、寝てる方がいいですか?」
 運転しながら考え事をしているのだろう。放って置いても周りに人が集まってしまう彼のような人にとっては、きっとひとりの時間も大切なのだと思う。
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