365日のラブストーリー
「それはちょっと、難しいと思います。わたしが良くても向こうが」

 有紗は首を横に振った。社内でも見ても他に男性社員はいるはずだ。それなのになぜそうなってしまうのだろうか。Renとの会話のデジャブのようだ。

「どうして神長さんなんですか?」
「だって好きなんじゃないの?」
「ええっ?」

「これまでの憧れの人は『ずっと見ていたい』って風だったけど。神長さんだと『恥ずかしくて目を合わせることもできません』ってかんじじゃない。違った?」

 どちらかというと、目力にやられて硬直してしまうのを避けるためでもあるのだが、宇美にはそう見えるらしい。

「もう森住さんと付き合ってるっていうんなら、他の人をすすめるのもアレだけどね」
 付き合っていないとは言い切れずに、言葉を詰まらせる有紗を見て宇美が笑う。

「断れなくて付き合ったんじゃない?」
 なんと答えたらいいのか分からずに、有紗は微笑みを取り繕う。
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